名前:mai
仕事:EC、広報
出身:愛知県名古屋市
好きなこと:読書、あんバター
ひとこと:よろしくおねがいします。
インスタグラムに"The magic sofa"というショートムービーが公開されました。【こちら】
その元ネタの話です。↓
研修期間に「Dottyの小説をつくる」という課題で書いたものです。
お手柔らかに…
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「桃子へ。8歳のおたんじょう日おめでとう。かえられなくてごめんね。たんじょう日プレゼントに、このソファをおくります。このソファは魔法のソファなんだ。いい子にしていたら、きっとすてきなことがおこるよ。お父さんより。」
こんな手紙とともに、桃子のもとには綺麗にリボンがかけられたビーズ生地の上等なソファが届きました。それはとても立派なもので、体の小さな桃子にはいささか大きすぎましたが(じっさい、桃子が座るとあしがぶらぶらしてしまいます。)、桃子が大きくなっても使えるように、というお父さんの配慮だったのでしょう。
しかし、桃子はソファなんか見向きもせずに、ビョオビョオと大泣きしています。
「お父さんの嘘つき。お父さんなんて大嫌い――――――。」
実は桃子のお父さんは、仕事の都合でアメリカという海の向こうの国にいて、ほんとうならば、桃子の誕生日(すなわち今日なのですが)までには日本に帰国する予定だったのです。しかし、残念なことに、のっぴきならない都合で帰ってくるのが難しくなってしまったのです。
「帰ってくるって約束したのに―――――。」
桃子は泣き続けました。いくら上等な誕生日プレゼントをもらっても、お父さんがそばにいなければ嬉しくありません。お母さんがいくらなだめすかしても、お手伝いさんが好物のレーズンバターサンドを作ってくれても、桃子はビョオビョオビョオビョオ泣き続けました。
何時間も、何時間も、桃子があんまりにも泣き続けるものですから、お母さんもお手伝いさんも、ついには手を余してしまいました。
「それにしても、魔法のソファって何なのかしらねぇ。」なんて話しています。
それも桃子には愛想をつかされたみたいで悔しくって、ますますビョオビョオビョオビョオと泣き続けました。
でも、朝からずっとずっと泣き続けていたものですから、桃子はついには疲れてしまい、そのソファの上でウトウトと居眠りをし始めました。
そして、気がつくと、桃子は海の上にいました。
ソファに座って、波に乗っています。そのソファは、決して水に沈むことのない魔法のソファだったのです。
海ですれちがう魚たちは口々にほめてくれます。
「素敵なソファだなぁ。そんなソファは初めて見たよ。」
漁師さんたちも
「どこに売っているんだい?僕もそのソファに乗って釣りができればなあ」
なんて羨ましそうに見ています。
桃子はうれしくなって、
「素敵でしょ!これはあたしのお父さんが誕生日にくれた魔法のソファなの!」
と胸をはって威勢よく答えます。
2.3時間も海の上にいたでしょうか。水平線の向こうに、かすかに陸が見えてきました。
「しめた!」
桃子は陸に近づこうと漕ぎ続けます。少しずつ、少しずつ。
そしてその陸の上には――――
「お父さん!」
お母さんは、桃子が、眠気まなこで、でもとても幸せそうに誕生日ケーキをほおばりながら話すのを聞いています。
「それでね、お父さんと一緒にアイスクリーム屋さんに行ったの。信じられないくらいたくさん種類があって、どれもとってもカラフルなの!お店のひとも親切で、誕生日なんだっていったら、5つも試させてくれたの!」
お母さんは、もちろん桃子が夢を見たのだろうと思いましたが、機嫌を直してくれたのがうれしくってニコニコ話を聞いています。
でも、つぎの日の朝、お手伝いさんが掃除のために桃子の部屋に入ると、たしかにそのソファからは、潮のかおりがするのでした。
おわり。
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↑昔、長崎に旅行した時に見た鉄道のプラットフォームと海。島原です。
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